「高齢だから」「外国籍だから」という理由で部屋探しの入り口でつまずき、何件も入居申込を断られて困っている方、あるいはそのご家族のための記事です。この記事では、なぜこうした断られ方が起きやすいのかという背景を事実として整理したうえで、2025年10月に施行された改正住宅セーフティネット法などの公的な制度、使える相談窓口を順に紹介します。個別の契約が違法かどうかを断定するものではなく、まず状況を整理し、次の一歩を選ぶための材料として読んでください。
この記事の要点
- 日本には、年齢や国籍を理由とする住宅の入居拒否そのものを包括的に禁止する法律は現時点ではなく、契約するかどうかは原則として貸主の判断に委ねられています。この記事では「違法」と一律に断定はしません(障害を理由とする場合は障害者差別解消法という別の枠組みがあります)。
- 国は住宅セーフティネット法により「住宅確保要配慮者」(高齢者・外国人・低額所得者等)の入居を支援する仕組みを整備しており、2025年10月1日には改正法が施行され、居住サポート住宅の認定制度や認定家賃債務保証業者制度が新設されました。
- 居住支援法人、セーフティネット住宅、UR賃貸住宅・公営住宅、法務省の人権相談窓口など、属性に応じて使える制度・相談先が複数あります。まず自分のケースがどれに当てはまるかを確認することが出発点です。
事実:なぜ高齢者・外国籍は入居を断られやすいのか
貸主側が挙げる懸念の実態
不動産情報サービスのアットホーム株式会社が2026年2月に実施した「高齢者の賃貸居住」に関する調査(賃貸住宅管理会社632社、賃貸住宅に居住中の60歳以上288人〔要支援状態でなく子と同居していない方〕が対象)では、直近1年間で高齢であることを理由に入居を断ったことがあると回答した管理会社は49.2%、賃貸の入居申込みで断られた経験があると回答した60歳以上は10.7%でした。また同調査で管理会社が単身高齢者の入居において課題(リスク)と感じていることを聞いたところ、「孤独死」が84.0%で最も多く、次いで「事故物件化」38.4%、「残置物処理」37.0%でした。外国籍の入居希望者については、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の実態調査を引用した民間の解説記事で、外国人入居者の2割程度が契約を断られた経験があると紹介されています(調査年・対象の詳細は公表資料で確認できていません)。いずれも調査時点・調査方法によって数値に幅がある点には留意してください。
貸主・管理会社側が挙げる懸念としては、高齢者については「孤独死後の発見の遅れや残置物処理」「保証人を頼める家族がいないこと」、外国籍の入居希望者については「言語の壁による生活ルール(ゴミ出し・騒音等)の周知不足」「緊急時の連絡・意思疎通への不安」などが指摘されることが多いとされています。これらはあくまで貸主側が説明する懸念であり、個々の入居希望者の実態を正しく反映しているとは限りません。
注意: ここで紹介する「断られやすい背景」は、貸主・管理会社側の懸念として一般に説明されている内容の整理であり、個別の入居希望者について当てはまることを意味するものではありません。
日本に入居差別を禁止する包括的な法律はあるか
結論として、人種・国籍・年齢等を理由とする住宅の入居拒否を包括的に禁止する法律は、本記事作成時点で日本には存在しません。宅地建物取引業法や借地借家法にも、入居審査における差別的取扱いを直接禁止する条文はなく、契約を締結するかどうかは契約自由の原則のもとで貸主の判断に委ねられているのが現状です。そのため、この記事では特定のケースについて「違法である」と断定することは避け、事実として制度・窓口を紹介する立場を取ります。なお、自治体によっては人権尊重に関する条例で差別的な取扱いへの相談・救済の仕組みを設けている場合があるため、お住まいの自治体の人権担当窓口も確認先の一つになります。
ただし、障害を理由とする場合は別のルールがあります。障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、平成25年法律第65号)は事業者が障害を理由に不当な差別的取扱いをすることを禁じており、令和3年改正法(2024年4月1日施行)により合理的配慮の提供も事業者の法的義務になりました。国土交通省の「国土交通省所管事業における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」(令和5年11月改定)では、物件広告に「障害者不可」と記載すること、貸主や保証会社と必要な交渉をしないまま障害のみを理由に仲介を断ることなどが、不当な差別的取扱いにあたるとされています。
ポイント: 「違法ではない=仕方がない」という意味ではありません。国は後述のとおり、住宅セーフティネット法など別の枠組みで、高齢者・外国人等が入居しやすい環境づくりを進めています。個別のケースで納得できない扱いを受けたと感じた場合は、後述の相談窓口に相談することができます。
外国人であることのみを理由とした一律の入居拒否については、法務省の人権擁護機関が人権相談の対象として扱っており、外国語での相談窓口も設けられています(後述)。これは法律による禁止とは別の枠組みですが、実際に相談できる公的な窓口として押さえておく価値があります。
なお、国籍のみを理由として入居を拒否した事案について、裁判所が民法709条の不法行為または信義則違反にあたるとして貸主(家主)に損害賠償を命じた裁判例があります(大阪高裁平成18年10月5日判決、京都地裁平成19年10月2日判決=慰謝料100万円と弁護士費用10万円の計110万円を認容)。なお京都地裁の事案では、仲介業者については、特段の合意がない限り申込者の国籍を事前に調査する義務はないとして責任が否定されています。ただしこれらはいずれも個別事案についての判断であり、同じような断られ方をすれば必ず同じ結論になるというものではありません。ご自身のケースについて法的な判断が必要な場合は、弁護士会の法律相談や法テラスにご相談ください。
事実:住宅セーフティネット法と2025年10月の制度改正
住宅確保要配慮者とは
正式名称「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」(平成19年法律第112号、住宅セーフティネット法)は、住まいの確保に配慮が必要な人を支援するための法律です。同法2条1項に基づき、低額所得者・被災者・高齢者・障害者・子どもを養育する者などが法律上の対象として定められており、同法施行規則によって外国人等もこの「住宅確保要配慮者」に追加されています。地方公共団体が定める供給促進計画によって、新婚世帯など対象をさらに広げている地域もあります。
2025年10月1日施行の改正のポイント
改正住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律/令和6年法律第43号、令和6年6月5日公布)は2025年(令和7年)10月1日に施行され、主に次のような制度が導入・拡充されました。
- 居住サポート住宅の認定制度創設:居住支援法人等が入居者の安否確認・見守りを行い、必要に応じて福祉サービスにつなぐ機能を備えた住宅を、市区町村長等が認定する制度です。
- 認定家賃債務保証業者制度の創設:登録を受けた家賃債務保証業者のうち、住宅確保要配慮者が利用しやすい一定の要件を満たすものを国土交通大臣が認定する制度です。認定を受けた業者は、居住サポート住宅(認定住宅)の契約を結ぼうとする住宅確保要配慮者からの家賃債務保証の申込みを、正当な理由なく拒まないことが認定基準とされています(同法72条1項1号)。あわせて、親族等の緊急連絡先の提供を保証契約の条件として求めないこと(同項2号)、保証人の設定を求めないこと(施行規則33条3号)も基準に含まれます。この引受義務は居住サポート住宅に関する申込みが対象であり、認定業者だからといってあらゆる民間物件で保証を引き受けてもらえるとは限りません。認定業者の一覧は国土交通省のウェブサイトで公表されているため、保証会社の審査で断られ続けている場合は、居住サポート住宅など認定業者を扱っている物件かどうかを不動産会社に確認してみるのも一つの方法です。
- 居住支援法人の業務に残置物処理等を明記:単身高齢者の死亡後の残置物処理・契約解除への対応を、居住支援法人の業務として制度上位置付けました(同法62条5号)。
- 生活保護受給者の家賃の代理納付の原則化:生活保護を受けている方が居住サポート住宅に入居する場合、福祉事務所(保護の実施機関)が住宅扶助費を借主に代わって貸主へ直接支払う「代理納付」(生活保護法37条の2)が原則として適用されることになりました。家賃を立て替えて支払うのは居住支援法人ではなく保護の実施機関です。実際の運用はお住まいの自治体の福祉事務所にご確認ください。
- 終身建物賃貸借の認可手続の簡素化:入居者が亡くなるまで契約が続き、死亡により契約が終了して相続人に引き継がれない「終身建物賃貸借」(高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づく制度)について、事業者としての認可を受けたあとは対象住宅を届け出る方式に改められ、貸主が利用しやすくなりました。
豆知識: 認定家賃債務保証業者制度は2025年7月1日から申請受付が始まり、認定の開始は同年10月以降とされています。制度の詳細な認定基準・対象業者は今後も更新される可能性があるため、最新情報は国土交通省の公式サイトで確認することをおすすめします。
居住支援法人・セーフティネット住宅とは
居住支援法人とは、同法59条に基づき都道府県知事が指定する法人(業務の内容は同法62条に規定)で、住宅確保要配慮者に対して家賃債務保証の提供、入居に関する住宅情報の提供・相談、見守りなどの生活支援を行います。NPO法人や社会福祉法人などが指定を受けているケースが多く、賃貸住宅の紹介だけでなく、契約前後の相談にも対応しています。
また、同法8条以下に基づき、住宅確保要配慮者の入居を拒まないことを登録した賃貸住宅は「住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅」(通称:セーフティネット住宅)として登録されており、「セーフティネット住宅情報提供システム」で全国の登録住宅を検索できます。安否確認等の機能を備えた「居住サポート住宅」についても、専用の情報提供システムが用意されています。ただし、登録の際に貸主は住戸ごとに「入居を受け入れる住宅確保要配慮者の範囲」を限定して登録することができます。たとえば高齢者は受け入れるが外国人は対象外という登録もあり得るため、検索システムでは各住戸の受入対象の欄を必ず確認してください。
| 制度・窓口 | 主な内容 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 居住支援法人 | 家賃債務保証、住宅情報提供・相談、見守り等の生活支援 | 高齢者・障害者・外国人・低額所得者等(住宅確保要配慮者) |
| セーフティネット住宅 | 要配慮者の入居を拒まないことを登録した民間賃貸住宅の検索。登録時に受入対象を限定している住戸あり(要確認) | 同上 |
| 居住サポート住宅 | 安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎ機能を備えた住宅(2025年10月〜認定制度) | 主に単身高齢者等 |
| UR賃貸住宅 | 原則として連帯保証人・保証会社が不要とされる公的賃貸住宅。年齢制限を設けていないとされるが、収入基準あり(単身者は家賃6万2,500円未満で家賃の4倍以上の月収など) | 幅広い世帯(高齢者向け優良賃貸住宅制度もあり) |
| 公営住宅 | 収入要件を満たす世帯向けの賃貸住宅。高齢者・障害者世帯等への優先入居枠を設ける自治体もある | 低額所得者・高齢者・障害者世帯等(自治体により要件が異なる) |
公営住宅は公営住宅法(昭和26年法律第193号)に基づき地方公共団体が供給する住宅で、入居には収入分位などの収入要件があり、単身での申込みには自治体ごとに別途の資格要件が設けられている場合があります。募集は定期募集が中心で応募倍率が高い地域も多いため、募集時期と要件をお住まいの自治体の住宅課で確認してください。
注意: 表中の制度内容は本記事作成時点(2026年9月)の一般的な説明であり、自治体・物件・時期によって運用が異なります。申込前に各制度の公式窓口・公式サイトで最新の要件をご確認ください。
自己診断:自分・家族のケースに当てはめて確認する
自分(またはご家族)の状況が、どのような理由で入居審査に不利になりやすいのか、また使える制度がどれに当てはまりそうかを、次の項目で確認してみてください。
高齢者のケースで確認したいこと
- 連帯保証人を頼める家族・親族がいるか、いない場合は家賃債務保証業者(保証会社)の利用を検討しているか
- 単身での入居で、緊急連絡先(同居しない家族・知人等)を用意できるか
- 万一の際の残置物処理・解約手続きについて、家族や居住支援法人と事前に相談できているか
- UR賃貸住宅や公営住宅、セーフティネット住宅など、高齢者の入居を前提とした制度・物件を検討したことがあるか
連帯保証人・保証会社の違いや極度額の考え方については連帯保証人と保証会社は何が違う?極度額の書き方でわかる契約書の見方で詳しく解説しています。入居審査全般で落ちやすい理由と対処法は入居審査に落ちる理由と対処法:フリーランス・学生が通すための準備もあわせてご確認ください。
外国籍のケースで確認したいこと
- 日本語での重要事項説明・契約書の内容を十分理解できる自信があるか、通訳・翻訳のサポートを得られるか
- 緊急連絡先(日本語対応可能な知人・勤務先・日本語学校等)を用意できるか
- 連帯保証人を頼める人がいない場合、家賃債務保証業者の利用を前提とした物件を探しているか
- 自治体の国際交流協会・多文化共生窓口や、外国人支援を行う居住支援法人に相談したことがあるか
ポイント: 日本語に不安がある場合、契約書・重要事項説明書の内容を「なんとなく分かった」まま署名するのではなく、母語での説明資料の有無や、通訳同席の可否を事前に確認することが大切です。契約書と重要事項説明書の内容が食い違っていた場合の考え方は重要事項説明書と契約書はどう違う?内容が食い違ったときの対処法で解説しています。
共通で確認したいこと
- これまで断られた理由が明確に説明されているか(保証人・収入・属性等、具体的な理由が示されているか)
- 不動産会社・管理会社が居住支援法人やセーフティネット住宅の情報を提供してくれているか
- 「この物件・この会社では難しくても、別の制度・別の窓口では対応できる可能性がある」という前提で探しているか
入居審査の可否は、個々の貸主・保証会社の審査基準や物件の事情によって大きく異なります。この自己診断は一般的な確認項目の整理であり、特定の物件の審査結果を保証したり、断られたことの当否を判断したりするものではありません。
行動:使える制度・準備する書類・相談窓口
準備しておきたい書類・情報
- 収入・年金等を証明する書類(年金振込通知書、確定申告書、給与明細等)
- 緊急連絡先の候補者リスト(家族・親族に限らず、居住支援法人が代替を提案できる場合もある)
- 家賃債務保証業者の利用可否・保証料の目安についてのメモ
- 外国籍の場合は在留カード等の身分証明書類と、日本語以外での問い合わせが可能かどうかの確認結果
不動産会社・管理会社への確認の仕方(一般的な例)
以下は、部屋探しの相談をする際の言い方の一例です。個別の状況によって適切な聞き方は異なるため、あくまで参考としてご利用ください。
- 「保証人を立てられない場合、家賃債務保証業者を利用できる物件はありますか」
- 「セーフティネット住宅や居住支援法人と連携している物件を紹介してもらえますか」
- 「契約書・重要事項説明の内容について、通訳や母語での資料を用意してもらうことはできますか」
豆知識: 居住支援法人や自治体の窓口に先に相談してから不動産会社を訪ねると、対応可能な物件やサポート内容の情報を事前に得られる場合があります。まず一人で不動産会社を回るのではなく、公的な窓口を経由する探し方も選択肢として検討してみてください。
相談窓口
- 居住支援法人:都道府県が指定する法人で、住宅情報の提供・相談、生活支援を行っています。国土交通省のサイトから都道府県別の一覧を確認できます。
- セーフティネット住宅情報提供システム/居住サポート住宅情報提供システム:住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅、安否確認機能等を備えた住宅をオンラインで検索できます。
- 自治体の住宅課・福祉課、国際交流協会・多文化共生窓口:公営住宅の入居要件や、外国籍の方向けの生活相談窓口を案内しています。
- 法務省の人権擁護機関:外国人であることを理由とした一律の入居拒否等について、「外国人のための人権相談所」や外国語人権相談ダイヤル(0570-090911、複数言語対応)で相談を受け付けています。
- 消費生活センター(消費者ホットライン188)・弁護士会の法律相談・法テラス:契約内容や審査結果をめぐって具体的なトラブルに発展した場合、また国籍・障害等を理由とする拒否について法的な判断が必要な場合の相談先です。
- 自治体の人権担当窓口:人権尊重に関する条例に基づき、差別的な取扱いへの相談・救済の仕組みを設けている自治体もあります。
部屋探し全体で確認しておきたいチェックポイントは賃貸借契約で失敗しないために、契約前に確認すべき10のチェックポイント、契約後にトラブルが起きた場合の窓口の使い分けは賃貸トラブル、誰に相談すればいい?窓口の使い分けガイドでまとめていますので、あわせてご確認ください。
まとめ
高齢・外国籍を理由に入居審査で断られる背景には、貸主側の懸念(孤独死・残置物処理・言語の壁等)があるとされていますが、日本にはこうした入居拒否を包括的に禁止する法律は現時点ではなく、この記事でも個別のケースを「違法」と断定することは避けています。一方で、住宅セーフティネット法とその2025年10月施行の改正により、居住支援法人・セーフティネット住宅・居住サポート住宅・認定家賃債務保証業者制度など、公的な支援の枠組みが整えられています。UR賃貸住宅や公営住宅といった選択肢もあわせて検討しながら、自分のケースに合った制度・相談窓口を一つずつ確認していくことが、部屋探しを前に進める現実的な一歩になります。