入居申込の書類を見て、「連帯保証人」の欄と「保証会社利用料」の請求が両方あることに戸惑った方、あるいは親や知人に連帯保証人を頼まなければならず「何にどこまで責任を負わせることになるのか」が不安な方のための記事です。連帯保証人と保証会社は名前は似ていますが法律上の性質がまったく異なり、契約書の見るべきポイントも違います。この記事では、両者の違い、極度額という制度の意味、保証会社の仕組みと費用、自分の契約への当てはめ方、確認すべき書類と相談先の順に整理します。
事実:連帯保証人と保証会社は何が違うのか
連帯保証人とは(民法上の保証契約)
連帯保証人とは、借主(賃借人)が家賃を滞納するなど賃貸借契約上の債務を履行しない場合に、借主本人と連帯して(つまり借主と同じ立場で)その債務を履行する責任を負う人のことです。民法上の保証契約に基づき、貸主と連帯保証人との間で契約が成立します。親や親族に連帯保証人を頼むケースが典型例ですが、法人が連帯保証人になることもあります。後述する極度額規制は「保証人が個人であるとき」に適用されるため、誰が連帯保証人になるかによって契約書の見方が変わります。
連帯保証人になると、借主本人への催告(先に督促すること)を待たずに貸主から直接請求される可能性があり、通常の保証人よりも重い責任を負います(民法454条・452条・453条)。この責任の重さゆえに、後述する極度額規制が設けられています。
家賃債務保証会社とは(保証委託契約)
家賃債務保証会社(保証会社)は、借主が保証料を支払うことで、家賃滞納などが発生した場合に貸主へ立て替え払い(代位弁済)を行う法人(多くは株式会社)です。借主と保証会社の間で結ぶ契約は「保証委託契約」と呼ばれ、民法の個人保証とは別の枠組みの契約です。保証会社は、借主との保証委託契約に加えて、貸主に対しては保証人としての責任を負う立場に立ちます。この二重の関係があるため、借主が滞納すると保証会社が貸主に立て替え払いをし、その後で借主に請求するという流れになります。
保証会社は国土交通省の「家賃債務保証業者登録規程」(平成29年国土交通省告示第898号、公布は平成29年10月2日、施行は同年10月25日、令和7年7月18日国土交通省告示第543号により最終改正)に基づく任意の登録制度があります。登録は義務ではなく、登録していない事業者が保証業を営むこと自体は適法とされていますが、登録業者は財産的基礎や苦情対応体制などの一定の要件を満たしているため、選ぶ際の参考情報にはなります。なお、2025年(令和7年)10月に施行された改正住宅セーフティネット法により、従来の任意の登録制度に加えて、国土交通大臣が家賃債務保証業者を認定する新たな制度が設けられました。認定の詳細な基準・運用は今後の国土交通省の発表を確認する必要がありますが、登録業者・認定業者の一覧はいずれも国土交通省のウェブサイトで公表されています。
ポイント: 「保証人」と「保証会社」は日常会話では同じような意味で使われがちですが、契約書の上では別の当事者・別の契約です。契約書に両方の欄がある場合、それぞれ別の法的責任として理解してください。
両者を比較する
| 項目 | 連帯保証人(個人) | 家賃債務保証会社(法人) |
|---|---|---|
| 契約の性質 | 民法上の保証契約 | 保証委託契約(サービス契約) |
| 契約の相手方 | 貸主 | 保証会社(借主が保証料を支払って利用) |
| 極度額規制(民法465条の2) | 適用される(書面等での極度額の定めが必須) | 適用されない |
| 費用 | 実務上は無償で引き受けられることが多い(親族等が引き受けるケースが典型) | 保証料が発生(初回・更新時) |
| 情報提供義務 | 借主の委託を受けて保証をした保証人から請求があれば、貸主は主債務の履行状況を通知する義務を負う(民法458条の2)。加えて保証人が個人の場合、借主が期限の利益を失ったときは貸主が2か月以内に通知する義務がある(民法458条の3) | 民法458条の2は保証人が法人の場合も対象となり得る。実務上の運用は保証委託契約の条項による |
| 求められる場面 | 貸主・管理会社の方針、または保証会社が利用できない属性の場合 | 保証会社利用が必須の物件、保証人を立てられない場合 |
国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」にも、個人保証人を利用する場合の「連帯保証人型」(極度額記載欄あり)と、保証会社を利用する場合の「家賃債務保証業者型」の2種類のひな形が用意されており、両者が別物として整理されていることがうかがえます。標準契約書自体は法令上の使用義務があるものではなく、あくまで任意の参考モデルです。
契約前に確認しておきたい書類は保証人・保証会社の欄だけではありません。契約書全体のチェックポイントは賃貸借契約で失敗しないために、契約前に確認すべき10のチェックポイントにまとめています。
事実:極度額規制(民法465条の2)とは何か
制度の内容
2020年(令和2年)4月1日に施行された改正民法465条の2により、個人が賃貸借の連帯保証人になる契約(法律上は「個人根保証契約」と呼ばれます)については、極度額(責任の上限額)を書面または電磁的記録で定めなければ、保証契約自体が無効になるというルールが設けられました。
極度額とは、連帯保証人が最終的に負う可能性のある責任の上限金額のことです。改正前は、連帯保証人が家賃滞納額に加えて原状回復費用や損害賠償まで青天井で責任を負わされる例が問題視されており、それを受けて上限を明確にすることが義務づけられました。
注意: 極度額の定めは書面または電磁的記録でなければならず、口頭の合意だけでは極度額を定めたことにはなりません。契約書に「極度額 金〇〇円」といった具体的な記載があるかどうかが判断のポイントです。
誰に、いつから適用されるか
この規制には、押さえておくべき2つの限定があります。
- 適用対象は個人保証人のみです。家賃債務保証会社(法人)が保証人となる保証委託契約には、極度額規制は適用されません。保証会社を利用する契約書に極度額の記載欄がなくても、それ自体は問題ではありません。
- 適用されるのは令和2年4月1日以降に締結された保証契約です。ただしそれ以前に締結された保証契約でも、施行後に保証契約が合意更新された場合や、新たに保証契約を結び直した場合には改正民法が適用され、極度額の定めが必要になります。逆に、施行後に一度も保証契約が合意更新されていない場合は、極度額の定めがなくても有効とされています(国土交通省「民法改正を受けた賃貸住宅標準契約書Q&A」Q1・Q2)。なお、更新時に連帯保証人へ連絡・確認をしていないなど「合意更新」といえるかが曖昧なケースもあり、評価が分かれ得ます。古い契約の扱いに疑問がある場合は、契約書一式を持って専門窓口に確認してください。
なお、個人の連帯保証人が亡くなった場合、その時点で保証の対象となる債務(元本)が確定し、以後に発生する家賃等は保証の対象外になります(民法465条の4)。この場合、貸主から新たな連帯保証人を立てるよう求められることがあります(国土交通省「民法改正を受けた賃貸住宅標準契約書Q&A」Q10)。
豆知識: 国土交通省「民法改正を受けた賃貸住宅標準契約書Q&A」は、極度額の表記例として「〇〇円(契約時の月額賃料の〇か月相当分)」「契約時の月額賃料(〇〇円)の〇か月分」「〇〇円」を挙げており、いずれも具体的な金額が書かれている点が共通しています。法務省のパンフレットも「極度額は『○○円』などと明瞭に定めなければなりません」としています。金額の記載がなく「賃料の〇か月分」とだけ書かれている場合に極度額の定めとして足りるかは争いの余地があるため、金額が明記されているかを確認してください。なお同Q&Aによれば、極度額は保証契約の締結後に賃料が増減しても変わらず、契約時の額が適用されるとされています。
極度額が定められていないとどうなるか
令和2年4月1日以降に締結された契約で、個人の連帯保証人について極度額の定めが書面または電磁的記録にない場合、その保証契約自体が無効になります。つまり、連帯保証人欄に署名・押印していても、極度額の記載がなければ、法律上その保証人は責任を負わない可能性があるということです。
ただし、これは保証契約が無効になるという話であり、賃貸借契約自体(借主と貸主の契約)が無効になるわけではない点に注意してください。また、契約書の記載を実際にどう評価するかは個別の事実関係によるため、心当たりがある場合は契約書一式を持って専門窓口に確認することをおすすめします。
重要事項説明・契約書の読み合わせの場面でこうした条項を見落とさないよう、極度額の記載箇所は必ず自分の目で確認しておきたいポイントです。重要事項説明(35条書面)で確認しておきたい質問の型は重要事項説明(35条書面)で本当に聞くべき質問リストにまとめています。
事実:保証会社の費用と仕組み
保証料の目安
保証会社を利用する場合、一般的には借主が初回契約時に保証料を支払います。SUUMOの解説(2023年7月更新)は、初回保証委託料の目安を賃料・管理費の0.5か月分程度としています。ただし公的な統計はなく、保証会社・プラン・審査結果によって金額に幅があります。一律の相場と断定はできないため、必ず自分が契約する保証委託契約書に記載された金額を確認してください。
また、保証委託契約の更新料は、賃貸借契約の更新とは別のサイクルで発生することがあります。同じくSUUMOの解説では、保証委託契約は通常1年ごとに更新され、そのつど1万円程度の更新料が発生するとされています。つまり2年間住むと、初回保証料に加えて更新料が複数回発生する場合があります。更新の周期(年1回か、賃貸借契約の更新に合わせるか)と金額は保証会社・プランにより異なるため、保証委託契約書の記載を必ず確認してください。
保証料の金額・更新料の有無は保証会社ごと、また同じ保証会社でもプランごとに異なります。必ず自分が契約する保証委託契約書に記載された金額を確認してください。保証料は初期費用全体の中でも見落とされがちな項目のひとつです。初期費用全体の内訳と相場は賃貸の初期費用は家賃の何ヶ月分?内訳・相場と「任意オプション」の正体にまとめています。
保証会社が代位弁済した後はどうなるか
借主が家賃を滞納すると、保証会社は保証委託契約に基づき、いったん貸主に家賃相当額を立て替えて支払います(代位弁済)。その後、保証会社は借主に対して立替金の返還を求める(求償する)ことになります。つまり保証会社を利用しても、滞納した家賃自体を借主が最終的に支払う義務がなくなるわけではなく、支払先が貸主から保証会社に変わるだけという点は理解しておく必要があります。
保証会社の「追い出し条項」は無効とされた(最高裁令和4年判決)
かつて一部の保証委託契約には、①賃借人の家賃滞納が一定期間(例:3か月分以上)に達した場合に保証会社が無催告で賃貸借契約を解除できるとする条項や、②滞納2か月以上・連絡が取れない・建物が使用されていない・再び占有する意思がないと認められる、といった要件を満たす場合に、賃借人が明示的に異議を述べない限り建物の明渡しがあったものとみなすとする条項(いわゆる「追い出し条項」)が盛り込まれている例がありました。
これについて最高裁令和4年12月12日判決(第一小法廷、民集76巻7号1719頁)は、こうした条項は消費者契約法10条に違反し無効であると判断しました。判決の理由の要旨は、契約の当事者でない保証会社に解除権の行使や明け渡しの判断を委ねることは、賃借人の重要な権利(居住の継続)を不当に制約するというものです。解除権はあくまで契約当事者である貸主に帰属するべきという考え方が示されています。
ポイント: なお、判決とは別の問題として、家賃滞納があっても、貸主や保証会社が裁判手続きを経ずに鍵を交換したり荷物を運び出したりすることは、原則として違法な自力救済にあたるとされています。滞納した場合の具体的な流れと注意点は家賃を滞納したらどうなる?無断の鍵交換・追い出し条項と最高裁判決(令和4年)で詳しく解説しています。
自己診断:自分のケースに当てはめて確認する
チェック1:申込書・契約書に「連帯保証人」欄と「保証会社」欄の両方があるか
両方の記載がある場合、貸主・管理会社の方針として両方が契約条件になっている可能性があります。片方だけで足りるか、両方が必須かは、申込前に確認しておきたいポイントです。
チェック2:連帯保証人を頼まれた場合、契約書に極度額の記載があるか
- 契約書に「極度額」という言葉とともに、具体的な上限金額が明記されているか(「賃料の〇か月分」のように金額そのものの記載がない場合は要確認)
- 契約の締結日が令和2年4月1日以降かどうか
記載が見当たらない場合、契約締結日次第では保証契約自体の有効性に疑問符がつく可能性があります。ただし判断は契約書の実際の記載と事実関係によるため、心当たりがあれば専門窓口に相談してください。
チェック3:保証会社の保証委託契約書の内容を確認したか
- 保証料の金額・支払時期(初回のみか、更新時にも発生するか)
- 代位弁済が行われた場合の請求方法・連絡先
- 無催告解除・明渡しみなしに類する条項が残っていないか
チェック4:保証人を引き受ける側(親・親族等)の立場で考える
連帯保証人を引き受けてもらう相手がいる場合、その方に対して極度額(責任の上限額)がいくらに設定されているかを事前に伝え、理解してもらうことが望ましいといえます。極度額の記載がある契約書であれば、その金額を保証人本人と一緒に確認することをおすすめします。
チェック5:保証会社の審査基準に不安がある属性かどうか
フリーランス・自営業、学生、非正規雇用、高齢者、外国籍などは、保証会社の審査基準によっては通りにくいと感じられるケースがあります。審査基準は保証会社ごとに異なり(信販系は比較的厳格、独立系は比較的柔軟とされることが多いようです)、一社に落ちても別の保証会社を扱う物件であれば通る可能性があります。具体的な対処法は入居審査に落ちる理由と対処法:フリーランス・学生が通すための準備、高齢者・外国籍の方特有の事情は高齢者・外国籍の方の部屋探し:断られやすい背景と使える制度・相談窓口で解説しています。
注意: ここでの自己診断はあくまで一般的な確認の視点であり、個別の契約書の有効性を断定するものではありません。最終的な判断は契約書の実際の記載内容によります。
行動:確認する書類と相談先
確認する書類
- 賃貸借契約書:連帯保証人欄の有無、極度額の記載(具体的な金額。「賃料の〇か月分」のように金額そのものの記載がない場合は要確認)、契約締結日
- 保証委託契約書(保証会社利用の場合):保証料の金額・更新料の有無、代位弁済後の請求方法、解除・明け渡しに関する条項
- 重要事項説明書(35条書面):保証人・保証会社に関する説明の記載内容
- 申込書:保証人欄・保証会社欄それぞれの必須・任意の別
管理会社への確認の仕方(一般的な例)
以下は、保証人・保証会社について管理会社・貸主に確認する際の言い方の一例です。個別の状況によって適切な聞き方は異なるため、あくまで参考としてご利用ください。
- 「連帯保証人と保証会社は、どちらか一方で足りますか、それとも両方必須ですか」
- 「連帯保証人の極度額は契約書のどこに記載されていますか」
- 「保証会社の保証料は初回のみですか、更新のたびに発生しますか」
ポイント: 保証人を頼む相手がいる・いないにかかわらず、「両方求められる理由」を事務的に確認すること自体は何も問題のない質問です。遠慮せず、契約条件として何が必須なのかを整理してから申込に進むことをおすすめします。
相談先
保証契約・保証委託契約の内容に疑問がある、極度額の記載が見当たらない、保証会社とのやり取りでトラブルになりそうな場合は、次のような窓口に相談することができます。
- 消費生活センター(消費者ホットライン188):保証委託契約を含む契約トラブル全般について、まず状況を整理する助けになります。
- 法テラス(日本司法支援センター):極度額の定めの有効性など、法的な見通しについて相談したい場合の窓口です。
- 各地の弁護士会の法律相談:連帯保証人としての責任範囲など、個別の契約書の解釈が必要な場合は弁護士への相談をおすすめします。
トラブル全般の窓口の使い分けは賃貸トラブル、誰に相談すればいい?窓口の使い分けガイドにもまとめています。
まとめ
連帯保証人(個人)と家賃債務保証会社(法人)は、名前は似ていても法律上の性質が異なる別の仕組みです。個人が連帯保証人になる契約では、2020年4月1日施行の改正民法465条の2により、極度額を書面または電磁的記録で定めなければ保証契約自体が無効になりますが、この規制は法人の保証会社には適用されません。保証会社を利用する場合は保証委託契約書の保証料・更新料・解除条項の記載を、個人に保証人を頼む場合は契約書の極度額の記載を、それぞれ自分の目で確認することが最初の一歩です。判断に迷う点があれば、契約前であれば担当者に、契約後であれば消費生活センターや弁護士などの専門窓口に相談することをおすすめします。